
export · 12min read · 2026-04-07
海外販路開拓の始め方|老舗企業のための5ステップガイド
日本の老舗企業・伝統企業が海外販売を始めるための実践ガイド。商材選定から販路開拓、テスト販売まで5ステップで解説。
この記事のポイント
- 国内市場の縮小に対し海外では日本の伝統工芸品への需要が拡大中
- 英語力や大量生産は不要、翻訳ツールと小ロットから始められる
- 商材選定からテスト販売まで5ステップで海外販路を開拓できる
- JETRO・Faire・Etsyなど中小企業でも使える支援と販路がある
「うちの商品は海外でも売れるのだろうか?」
国内の需要が年々縮小するなか、こう考える老舗企業の経営者は増えている。実際に、経済産業省の統計によると、伝統的工芸品の国内生産額はピーク時(1984年)の約5,200億円から大幅に減少し続けている(出典: 経済産業省 伝統的工芸品産業室)。
一方で、海外に目を向けると景色が変わる。JETRO(日本貿易振興機構)が運営する「TAKUMI NEXT」プログラムでは、2025年度に34都府県106社の伝統工芸品が海外バイヤーに採択された(出典: JETRO TAKUMI NEXT 2025)。
では、実際に海外販売を始めるには何をすればよいのか?
この記事では、海外取引の経験がない老舗企業でも取り組める5つのステップを、具体的な手順とともに解説する。
なぜ今、海外販売なのか
「海外進出はまだ早い」と感じるかもしれない。しかし、以下の3つの変化を知ると、印象が変わるはずだ。
国内市場の構造変化
- 人口減少: 日本の生産年齢人口は2020年の約7,500万人から2040年には約6,200万人に減少する見通し(出典: 国立社会保障・人口問題研究所)
- 生活様式の変化: 和室の減少、洋食化、ファストファッションの普及により、伝統工芸品の国内需要は縮小傾向
- 後継者不足: 職人の高齢化が進み、技術伝承と経営の両面で危機感が高まっている
国内だけに頼る経営では、先細りのリスクが避けられない。
海外での日本製品への関心の高まり
海外では、日本の伝統技術への評価が着実に上がっている。
- JETRO TAKUMI NEXTプログラム: 米国・英国・豪州・香港など20社の海外バイヤーが日本の工芸品を直接買い付けている(出典: JETRO)
- Faire(フェア): 海外の独立系小売店向け卸売プラットフォーム。日本の陶磁器・キッチン用品・文具などを扱う卸業者が出店しており、70万以上のリテーラーが商品を探している(出典: Faire)
- インバウンドからの逆輸出: 日本を訪れた外国人旅行者が「あの商品をもう一度買いたい」と帰国後にオンラインで購入するケースが増加
ポイント: 海外のバイヤーは「安さ」ではなく**「ストーリーと品質」**を求めている。御社が長年培ってきた技術と歴史は、海外市場では大きな強みになる。
円安と越境ECの追い風
- 円安の恩恵: 為替が円安基調のとき、海外の購入者にとって日本製品は割安に映る。販売側にとっても円換算の利幅が広がる
- 越境ECの整備: Shopify、Etsy、Faire、Amazonグローバルセリングなど、中小企業でも使いやすい越境ECプラットフォームが充実
- 国際物流の進化: EMS(国際スピード郵便)やFedEx、DHLなどの国際宅配便で、小ロットでも海外発送が可能
海外販売を始める前に知っておくべきこと
実際のステップに入る前に、多くの企業がつまずくよくある誤解を整理しておこう。
誤解1:「英語が話せないと無理」
結論から言えば、最初から流暢な英語力は不要。
- 卸売プラットフォーム(Faire、Etsy等)は英語のテンプレートで商品登録できる
- バイヤーとのやり取りは翻訳ツール(DeepL等)で十分に対応可能
- JETROや各自治体の支援機関が通訳・翻訳のサポートを提供している
もちろん、取引が拡大すれば英語対応力があるに越したことはない。ただ、「英語ができないから海外は無理」と最初から諦める必要はまったくない。
誤解2:「大量生産しないと海外では売れない」
海外バイヤーが日本の工芸品に求めているのは、少量生産ならではの希少性と品質。
- 量産品ではなくハンドメイドの一点もの・限定品に高い価値を感じるバイヤーが多い
- MOQ(最小注文数量: Minimum Order Quantity)を少量から設定して問題ない
- むしろ「大量には作れない」という事実がブランド価値を高める
誤解3:「輸出には複雑な手続きが必要」
確かに、食品・医薬品・ワシントン条約に該当する素材などは規制がある。しかし、一般的な工芸品(陶磁器・木工品・テキスタイル・金属製品など)であれば、手続きは比較的シンプル。
- インボイス(送り状) と パッキングリスト(梱包明細書) の2つが基本書類
- 小口の発送であれば、郵便局のEMSで海外発送が可能
- 取引が拡大したら、フォワーダー(国際物流業者) に委託する選択肢もある
⚖️ Legal Notice
輸出規制にご注意ください: 一部の素材(象牙・べっ甲・特定の木材など)はワシントン条約(CITES)で国際取引が制限されています。漆器に使われる素材や、刃物類の輸出先国の規制も事前に確認が必要です。不明な場合は、JETROの貿易投資相談(無料)をご利用ください。
誤解4:「海外展示会に出ないと始まらない」
展示会は有効な手段のひとつだが、唯一の方法ではない。
- オンラインで始められる: 越境ECやB2Bプラットフォームへの出店から着手できる
- 費用対効果の問題: 海外展示会は出展料・渡航費・ブース装飾で数十万〜数百万円かかることも
- まずはデジタルで試す: オンラインで反応を見てから、展示会参加を検討するほうが合理的
海外販路開拓の5ステップ
ここからは、具体的な手順を解説する。すべてを一度にやる必要はない。できるステップから着手し、小さく始めることが大切。
ここまで読んで「自分たちだけでやるのは大変そうだ」と感じたら、プロに相談するのも選択肢のひとつ。Scratch Secondでは、日本の老舗企業・伝統企業の海外販路開拓を専門的にサポートしている。無料相談はこちら
よくある失敗と対策
海外販売に取り組んだ企業が陥りやすい3つのパターンを紹介する。事前に知っておけば回避できるものばかりだ。
失敗1: 商品説明が「日本語の直訳」になっている
日本語の商品説明をそのまま英訳しても、海外のバイヤーには響かない。
- NG: 「伝統の技を受け継ぐ逸品です」(抽象的すぎる)
- OK: 「1,300度の窯で24時間焼成。釉薬の微妙な色の違いは、一つとして同じものがない証拠です」(具体的で感覚に訴える)
対策: 海外のバイヤーは**「何ができるか」「なぜ特別か」「どう使うか」**を知りたい。機能・素材・製造工程を具体的に伝えよう。
失敗2: 梱包が国内仕様のまま
国内配送と国際配送では、商品にかかる衝撃がまったく異なる。
- 陶磁器の破損は国際配送で特に多いクレーム原因のひとつ
- 木箱・桐箱のような「高級感のある梱包」も海外バイヤーには好評
- 緩衝材は二重に。外箱と内箱の間にもクッション材を入れること
対策: 試しに自社商品を海外に1箱送ってみる。到着時の状態を写真で確認し、梱包を改善する。
失敗3: 「出せば売れる」と思っている
越境ECに出店しただけでは、海外のバイヤーには見つけてもらえない。
- 商品写真の品質が売上を大きく左右する。スマートフォンでも良いが、自然光で白背景が基本
- SEO(検索エンジン最適化): 商品タイトルに "Japanese" "handmade" "artisan" などのキーワードを含める
- SNS連動: InstagramやPinterestからECサイトへ誘導する導線を作る
対策: 出店後の最初の3か月は集客活動に注力する。商品登録だけで終わらせない。
注意: 米国向けの販売を検討している場合、関税制度の変更に注意が必要。2025年以降、$800以下の免税枠(de minimis)が撤廃され、日本からの輸入品には関税が適用されるケースが増えている。最新の関税率はJETROの国別情報で確認しよう。
よくある質問
まとめ ── 可能性を広げる第一歩を
海外販売は、一夜にして成果が出るものではない。しかし、日本の老舗企業が持つ技術・品質・ストーリーは、海外市場で確かな価値がある。
改めて、5つのステップを振り返ろう。
- 商材の海外適性を見極める ── 写真映え・サイズ・価格帯をチェック
- 販売チャネルを選ぶ ── まずは1つのプラットフォームに集中
- 価格設定と物流を整える ── 国際送料・関税を織り込んだ価格設計
- 海外バイヤーとつながる ── オンライン発信と公的支援の活用
- テスト販売から始める ── 小さく試して、学びながら改善
大切なのは、完璧を目指すことではなく、まず一歩を踏み出すこと。
御社の商品が海外のどこかで、誰かの暮らしを豊かにする。その可能性を広げるお手伝いができれば幸いだ。
「何から始めればいいかわからない」「自社商品の海外適性を判断してほしい」という方は、お気軽にご相談ください。Scratch Secondでは、老舗企業・伝統企業の海外販路開拓に特化した無料相談を承っています。無料相談はこちら
著者: 宮本博勝(Hiro)
Scratch Second代表取締役。南米食品サプライヤーでの法人営業を起点に、シリコンバレー発のフードテック企業のVP of Salesとして日本市場のゼロイチ立ち上げを指揮。大手コンビニ2,400店舗への商品導入、国際博覧会への原料提供。現在は世界最大級のIT企業にてアジア地域のビジネス開発に携わる。プライベートはヨット、ヨガ、サウナを日課とするウェルネス実践者。最新のヘルステックと日本の伝統的ウェルネス文化の融合をテーマに情報を発信。